今月の岡山県医師会報。
第25回日本産業衛生学会で、職場の健康問題のシンポジウムについての記事がありました。
これを読んで非常に思うところがあったので、そこでの重要なテーマ「発達障害」について引用しながら書いていきたいと思います。
職場で、「一生懸命やっている人達の中に、どうもちぐはぐして上手くいかない」、「就労に関して、何度も同じ失敗を繰り返したり、周囲と上手くコミュニケーションが取れない」等の適応障害の方がおられることがあります。適応障害については「発達障害」がある場合がありますが、それを認識されてきたのは最近であり、「発達障害」を理解するのは、「発達障害」のあるお子さんの健やかな発育と連動するため、まずは「発達障害」のある大人の方について述べていきます。
大人の場合、職場で問題になることが多いのは、知的障害のない軽度の広汎性発達障害や注意欠如が優勢な注意欠如/多動性障害を有し、診断や支援を受けてこなかった方々です。
この方たちは、大きな破たんを来たさず学生生活を送られますが、職場では学生時代とは比べ物にならないほど周囲の意図を正確に汲み取る能力や、複数の仕事の優先順位を判断してミスなく処理する能力等が求められるため、問題が顕在化します。
上司や周囲は、誰でも当然できるはずの役割を彼らが果たさないことに憤る。障碍者本人は「ちゃんとやっている」のに叱責されるストレスなどから、うつ病などの二次障害に陥る。
発達障害の方の社会適応には、障害者自身と周囲の人たちの双方が本人の障害について理解することが大切なのですが、障害者の方には問題なく学業を終えた自負があり(高学歴者も少なくない)、本人だけでなく家族も「障害」を認めることに抵抗を感じる場合が多い。
これは、障害を認めることは、将来の夢や家族の期待を断つことになりかねないので、無理からぬところですが。
障害者本人が「障害」を認識するためには、まず家族が「障害」を認識することがカギかと。
発達障害の人の課題は今の世の中では生きにくいこと。常識がないと言われるのは、常識が分からないからなのです。
特に子どもの時にはこの障害のために、虐待、いじめ、孤立、不登校、引きこもり、非行などが生じる可能性があります。
発達障害のある子に共通する特徴は、書き言葉(概念言葉)(私達が使っている言葉にはもう一つ、しゃべり言葉(日常言葉)がある)が学ぶのが苦手ということです。
義務教育では書き言葉を使って、概念として物事を教えているので、多くの発達障害のある子は、勉強が苦手で嫌いになります。
音楽、体育のように先ずは正解を示し、それを体験できるような工夫が必要で、多くの望ましいパターンを経験することが有用なのです。
発達障害のある子は体験が少ないと思いもしない勘違いを学習してしまします。
この勘違いをどれだけ少なくするのかというのが、発達障害の子が社会に適応していきやすくするポイントと言えます。
延々と書いてしまいましたが、発達障害の子が大人になると、社会への適応がより高度な対応を求められる中で、対応しきれずに、ニート、フリーター、職場でのいじめ、うつ、休職、離職・退職、引きこもり、子どもへの虐待、犯罪、ホームレスといった生じる可能性もあります。
身近な人や子どもで「何度も同じ失敗を繰り返したり、周囲と上手くコミュニケーションが取れない」といった状況を目にするときは、年齢に関係なく「発達障害の可能性がる」という認識を周囲の人たちも持つというのが大切ではないかと思いました。
発達障害の方達が周囲の環境に適応するためには長い時間と多くの労力が必要でもあります。
身近に「発達障害かも・・・」と思うような方がおられたら、職場においては「できること」「できないこと」を明確にして役割分担をすることで負担を軽くする、お子さんにおいては音楽、体育のように先ずは正解を示し、それを体験できるような工夫をしていって経験の引き出しを増やして思いもしない勘違いをする確率を減らす、そんな取り組みをイメージしておくと、良いのではないかと思います。
自分自身、今回発達障害というものについて大変参考になりました。
これからもより患者さんのためになる診察ができるように色々な知識の習得に努めていきたいと思います。