今日は耳鼻科のガンの治療のお話です。
耳鼻科のガンって肺とか胃とかのガンと違って、なじみが薄い。
もともとあまりないガンなんですが、もしなったらどえらいことになります。
それは、人から見える部分だから。
お腹のように服着たらなんとかなる、というレベルではない。
なので、鼻の近くの副鼻腔(ふくびくう)という空洞にガンができたりして放っといたらどうなるか?
ほっぺたから目にかけてが腐ってきます。四谷怪談の「お岩さん」はこの上顎ガンといわれています。
ガンはぎりぎりでとると、再発するリスクが高まるので、ガンのまわりの正常な組織もくっつけてとるのが理想です。
しかし、耳鼻科の領域のガンは、困ったことに非常に大事な神経や血管がコンパクトにいろいろ密集しています。
手術でとりたくてもとれない大事な血管や神経もある訳です。
それを、なんとか手術でガンをとろうとするとどうなるか?例えば副鼻腔のガンならそばに目があったりするので、もし正常な組織もくっつけてとろうとなると目玉も一緒にとらなければいけないイコール失明。しかもほっぺた周りの骨も一緒にとったりすると、顔面の変形もおこります。これは手術の方法が進歩して、とったところに手や足の皮膚や骨をもってきてボリュームをもたせたりすることはできるようになりましたが、目が見えるようになる訳ではなく人前に出やすくなるかというと、それもまた微妙。
そんな解剖学的な特殊性もあり、耳鼻科の領域のガンはなったら、もし手術でガンが治っても、後々の生活が大変・・・という場合が結構あります。
そんな困った耳鼻科のガンですが、ここでも医療技術の進歩が!
メスでとるのではなく、放射線でガンをやっつけちゃいましょうと。
ここでの放射線はよくいうX線(光子線)ではなく粒子線です。
粒子線とX線の違いは、X線は表面からだんだん強さが弱まっていくのに対して、粒子線はガンのある深さにだけ、ドン!と強い線量をあてれる点。
粒子線ですと、極端に言うと、ガンにだけ強い放射線を浴びせれるので、周りの大事な神経などの組織を痛めずにガンをやっつけることが可能になるのです。
粒子線には陽子線と重粒子線があるのですが、耳鼻科の領域でいうとお岩さんがなった上顎ガンなんかは、手術だったら目をとらないといけない、そんな場合でも目を犠牲にせずにガンだけやっつけれたりするのです!
これは凄いね!ということになるのですが、難点は2つ。
一つは、できる施設が限られているということ。
全国で陽子線は10施設、重粒子線は5施設のみ。
http://www.antm.or.jp/05_treatment/04.html
もう一つの問題は、お金が高いという点。
現在は保険適応はなく、高度先進医療という枠組みで治療を受ける形になるため患者さんは粒子線治療だけで約300万円を自己負担しなくてはなりません。
この点は設備投資が高額なのと、最新の医療なので有効性などについての検証が十分になされていないという理由で保険適応に至っていませんでした。
ただ、ここでも光明が。
この春から、陽子線治療については小児腫瘍が、そして重粒子線治療については切除非適応の骨軟部腫瘍が保険適応になることになりました!
この優れものの粒子線治療、どんなガンに効くの?陽子線と重粒子線はどう違うの?などなどより深くお知りになりたい方は、日本で唯一陽子線と重粒子線の両方の設備を持っている兵庫県にあるメディポリス国際陽子線治療センターのホームページhttp://www.medipolis-ptrc.org/がわかりやすいのでご覧になってみてくださいね^^